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2005年9月 8日 (木)

沼田祇園祭 其の二

改札を出ると、駅前の広いロータリーの向かうに山あひの温泉街のやうな町――事実幾つかの温泉宿と思はれる旅館があつた――が広がつてゐるのが見えたが、その全体が、焼けつくやうな夏の日差しにやられて元氣を無くしてゐるやうな雰囲氣で、祭りをやつてゐるといふ氣配がまるで無い。ロータリーから続く上り坂となつてゐる大通りを歩いて行つたが、御輿や山車の姿は無いし、お囃子の音などが風に乗つて聞こえて來るといふことも無いので、今日は祭りの最終日だつたはずだが、変だな、一体何処で祭りをやつてゐるのだらう、と思つてゐると、一人の中学生ぐらゐの少女がすれ違つた。

そこで、人間に化けた妖怪と、その正体を見破られることはないにしても、少女を誘拐する事件が頻発してゐる最中、ひよつとしてそのやうな怪しい人間と間違はれたりしないであらうかと、おそるおそる呼び止めて祭りのことを訊ねてみると、案に相違した可愛い笑窪のにつこり顔で、
「祭りならこの上のカミマチ(上之町のことか)に行かないと」
と云ひながら指差したのが、大通りを上つて行つた奥に広がりをもつて聳え立つ大きな台地の影であつた。

Dsc03294 「えつ、す、すると、あの山の上に町があるといふことなの?」
事実それは山と云つてもよいやうなもので、小僧が驚くのも無理は無かつた。鬱蒼とした森林が高く盛り上がつて出來たやうな青々とした台地が町の後方に広がつてゐて、その上には何も無いやうに見えたのであるが、実際はその奥に繁華な町が広がつてゐるといふ。

なるほどさうだつたのか、しかし、まいつたな、この暑さの中をあの山の上まで登らなければならないのか、と思つたが、そこまで來たからには引き返すわけにはいかない、そのままその通りを奥まで上つて行き、突き当たりの緑の深い崖の辺りから、上に向かつてカーブを描いてゐる、舗装されてゐるとは云へ勾配が急で幅の無い坂道の、草いきれのする脇の方を、時折通る車に轢かれないやうに注意しながら、えつちらおつちら歩いて行くと、果たしてその上には、祭り提灯と注連縄で飾られた、東京の下町の商店街と少しも変はらないやうな町並みが現れたのであつた。

山道の果てに祭りの丸提灯  神楽小僧

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