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2005年9月13日 (火)

沼田祇園祭 其の四

『おぎよん』は須賀神社の例大祭であるが、その神社が直ぐ近くにあるといふことで、小僧は早速そこに足を運ぶことにした。
須賀神社は本町通りの脇道を少し入つた所にあつたのであるが、その境内はそこそこの広さで、夜に御輿の宮入りでも行はれるのか、その周囲には紅白の幕が張られてゐて、照明の取り附けなど、その準備をしてゐる二三人の土地の人の姿が眼に入つた。だが、その人たちと隅のはうで語り合つてゐる一組の若い男女のほかに人影は無く、境内の中は閑散としてゐた。

しかし、その境内の中は町の中よりずつと涼しかつた。何故なら、拝殿の横に立つてゐる二本の大きなけやきの木がそれぞれ空を覆ふやうに長い枝を伸ばしてゐたからで、後に土地の人から聞いた話では、そのうちの一本は大変な樹齢を重ねてゐて、県の天然記念物に指定されてゐるといふことであつた。

Dsc03394_1 それはさておき、拝殿にお参りして、さあ帰らうとすると、何処からか
「小僧!小僧!」
と大きな声で呼ぶのが聞こえるではないか。小僧と云ふからにはオイラのことだらうか、と振り向いて境内の中を見廻したが、そこには誰も居ない。つい先ほどまで境内に居た何人かの人たちもいつの間にか消えて居なくなつてゐたので、はて、今の声は一体なんだつたのだらう、と首を傾げてゐると、今度は
「ハッハッハッハッハッハ!ハッハッハッハッハッハ!」
といふ大きな笑ひ声が辺り一帯に響きわたり、それと同時に頭上でけやきの木の枝が激しく揺れるザワザワザワといふ音がした。

一体何事だ、と吃驚してけやきの木を見上げると、何処にも人の影などは発見できなかつたが、遥か上のはうにある暗い茂みが揺れてゐて、間も無くその辺りから先ほどと同じ呼び声が聞こえてきた 。
「小僧!小僧!」
それは確かにこの小僧を呼んでゐた。そこで、頭の上に落ちて來た何枚かの木の葉を払ひながら、その声のする方に向かつて叫んだ。
「そこに居るのは誰だ!オイラに一体何の用だ!」

すると、直ぐにしはがれたやや甲高い声が返つてきた。
「小僧よ、くもながれかきのきのしたむしがつき、とは何ぞ?」
「はあ?姿も見せず、いきなりオイラに謎をかけようといふわけか?今なんと云つた?」
「雲流れ柿の木の下虫がつき、ぢや」
「雲が流れるのは空、つまり『天』。柿の木の下は『かきくけこ』の『き』の下で『く』。それに虫がつけば『ぐ』になる。その『天』と『ぐ』を繋げば・・・判つた!さては天狗だな、お前は!」

葉風より神の声洩れ大けやき  神楽小僧

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