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2005年12月13日 (火)

秩父祭 其の三

Simg_5780 その歌舞伎の舞台はどのやうな仕組みになつてゐるかといふと、一台の祭り屋台の左右に張り出し舞台と呼ばれる簡易式舞台をくつ附けて一つの舞台にしたもので、今回は本町の屋台がその当番になつてゐたのであるが、本町の屋台蔵が境内の奥にあつたことを歌舞伎を観てゐる最中思ひ出して、境内で歌舞伎が催されてゐる理由がその時なんとなく理解できたのであつた。

ところで、その歌舞伎と同じやうに屋台の上で演じられるものに、まう一つ『曳き踊り』と呼ばれる子供たちによる奉納所作があるのだが、これはその日交通規制が解除になる午後十時から団子坂を上つた所にあるお旅所で演じられるといふことで、それが始まる頃には帰りの電車に乗つてゐなければならない小僧としては、それが観られないのが実に残念なことであつた。

実際、昼間の強固な規制に対する憤懣を解消し、思ふ存分のびのびと祭りを楽しまうと思へば、規制に当たる警官が居なくなる午後十時から屋台が各町内に帰る午前二時頃までが狙い目なのであるが、その後始発電車が出るまでの時間底冷えのする秩父の町をうろうろしてゐるわけにもいかないので、いつかは各町内の解散式が終はるまで粘つてやるぞと思ひつつも、その日は我慢するしかないのであつた。

歌舞伎を観た後は再び本町通りに戻り、露店で買つた数個の大判焼きをたいらげながら、各町内屋台の提灯飾りつけを見たのであるが、一つ氣がついたことがあつた。どういふことかといふと、他の関東の山車祭りと同じやうに秩父の屋台の提灯の明かりも電氣によるものだと今まで思ひ込んでゐたのであるが、それは間違ひで、昔からの伝統を守り、その明かりにろうそくを用ゐてゐることに恥づかしながら今回初めて氣がついたのであつた。

小僧は祭り提灯の明かりはろうそくのはうが好ましいと常々思つてゐるから、これには何やらほつとした心地になつたのであるが、専門家の話によると、ろうそくの炎や蛍の光などには『F分の一揺らぎ』と呼ばれる微妙な光の現象があり、これが人の心を癒すことが実証されてゐるさうで、その話をテレビで知つた時、自分がどうしてろうそくに拘るのか、その理由が判つたやうな氣がしたのであつた。

さて、日が暮れると秩父の町は急に冷え込みが厳しくなり、夜祭りが始まるまでどうやつて暇をつぶすかと考へてゐると、とある駐車場の空き地でドラム缶に木材を入れて焚き火Simg_5503 が行はれてゐるのが眼に入つた。これ幸ひと、それを囲んでゐる人たちの仲間に入れてもら ひ、椅子代はりになつてゐるプラスチツクのビールケースに座つて温まつてゐたのであるが、隣に座つてゐた親切なオジさんに冷酒を勧められ、調子に乗つて相手が呆れるほどお代はりを重ねたのがまづかつた、急に眠氣が襲つてきて、地べたに横になつてそのまま深い眠りに落ちてしまつたのであつた。

さ迷ひて祭りの街の焚火かな  神楽小僧

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