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2006年5月21日 (日)

浅草三社祭

Simg_0012_4二十日の朝は昼近くまで寝過ごしてしまつた小僧、眼が覚めるなり直ぐ様その手をベツドの側にあるテレビのスイツチに伸ばすといふ最早絶対的な習慣となつてしまつた行為に及ぶと、忽ち眼に飛び込んできたのが、東京の初夏の風物詩浅草三社祭(さんじやまつり)が昨日つひに始まりました、といふニユースで、こりやいかん、このところ遠征が続いてゐたので三社祭のことをつひうつかり忘れてしまつた、灯台下暗しとはこのことだ、と慌てて飛び起き、顔も洗はず、そのまま何時買つたかも覚えてゐない黴(かび)の生えたコツペパンを齧(かぢ)りながらアパートを出たのだが、天氣がよかつたとは云へ外は暑いのなんの、JRと地下鉄を乗り継いで浅草の雷門に着いた頃には、駅から続く人波に揉まれてゐた所為もあるのだらう、真夏のやうなムンムンとした暑さを感じるほどで、浅草寺の前の浅草公園に辿り着くなり早速かき氷の屋台を探したのであつた。

屋台は澤山並んでゐたのだが、二箇月ほども訪れる時間を間違へたやうなその暑さに、かき氷や飲料水ならまだよいが焼きそばやたこ焼きを作つ てゐる香具師は大変、こちらまでその熱氣が傳はつてくるやうな熱い鉄板に体を寄せ、汗だくになりながらコテやピツクを動かしてゐて、それを見た小僧は、商賣とは云へ大変だなあ、と思はず同情してしまつたのであつた。

Simg_9950_3  それはさておき、かき氷をまるでビールを飲むやうに一氣に喉に流し込んだ小僧が神輿が集結してゐると思はれる浅草寺の境内に向かふと、思つた通りそこは人で溢れてゐて、「セイヤ!」とか「ソイヤ!」などと云ふ威勢のよい掛け声は聞こえても、その周りを塞いでゐる人たちが邪魔になつて肝心の御神輿が全く見えないといふ有様であつた。

そこで、少し遠廻りして浅草神社の方から浅草寺の本堂に上つたのだが、境内が見渡せるその本堂の正面の廊下にも人がずらつと立ち並んでゐて背の低い小僧には境内がよく見えない、仕方が無いから、こりや、寺には申し訳ないが屋根に登るしかないな、と考へ、そのとほり廊下の柱を傳つて本堂の屋根の上に登らうとすると、途中で少しバランスを崩してしまつた。体勢を立て直さうとして屋根から垂れ下がつてゐる大幕を手で掴んだのだが、これが拙かつた、緩んでゐた大幕が外れ、小僧もその勢ひで柱から落ちてしまひ、下に突き出てゐた屋根の上で弾んだかと思ふと丁度本堂の前に繰り出してゐた神輿の上に体が飛んでしまつたのであつた。

Simg_9981_1 神輿の上に落ちた小僧は必死であつた、その激しく揺れてゐる神輿の上から落ちないやうにと、その上に立つて扇子を振りながら音頭を取つてゐた男にしがみついたのだが、この男、身に附けてゐるのはふんどしだけといふ威勢のよい恰好で、まごついてゐた小僧はその男のふんどしを何氣なく引つ張つてしまつた。する と、なんといふことか、そのふんどしがはらりと解(ほど)け、男の下半身から離れてその神輿を担いでゐた一人の男の頭上に落ちてしまつたではないか。最初は何が起きたのか判らなかつた周りの群集も素つ裸にされた男の下半身を眼にすると皆たまげてしまつた。あつと息を呑んだやうな一瞬の静寂があつたのも束の間、直ちに爆笑とも罵声ともつかぬ歓声が境内中からどつと沸き上がつたのであつた。

青い眼の浴衣乱れてカメラぶれ  神楽小僧

注:この文章は全てフイクシヨンです。

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