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2006年6月16日 (金)

西枇杷島まつり 其の三

Simg_0156  といふわけで、朱藍坊に世話になつた小僧はそれからといふもの朱藍坊に頭が上がらず、その日も渋々朱藍坊の要求を聞き入れて二人で六軒町通りの屋台店を巡ることになつたのだが、朱藍坊の食欲は異常なほど旺盛で、焼きそばに始まつて、焼き鳥、フランクフルト、イカ焼き、クレープ、と喰ふこと、喰ふこと、金を払ふ小僧はほとほと困り果ててしまつた。

そこで、小僧は何とかして朱藍坊から離れようと密かにその機會を窺つてゐたのだが、程無くその機會はやつてきて小僧は大いに喜ぶことになつた。屋台を眺めて廻つてゐるうちに二人は山車の前方を持ち上げて方向転換する、所謂『どんてん』が行はれてゐる場面に出くはしたのだが、その時朱藍坊はその勇壮な光景を見るのに夢中になつてしまつたからであつた。そこで、小僧は、これ幸ひ、この機會を逃す手は無い、と人込みに紛れてその場から逃れようとした。

だが、悪いことはできないものである、丁度その時、小僧が人込みを掻き分けて進んで行かうとする方向から後続の山車が急に迫つてきて、それを慌てて避けようとした周りの群集によつて小僧は傍らの屋台に向かつて突然突き飛ばされてしまつたのであつた。小僧はたこ焼きを賣つてゐる屋台に勢ひよくドスンとぶつかつて、それからバタンと地面に倒れたのだが、ぶつかつた反動で屋台の上からタコの細切れが澤山入つてゐるバツト皿が落ちてきて、それが小僧の顔を直撃するといふ有様であつた。

「とほほ、何でかうなるの?」

と小僧が萩本欽一が云ふやうなことを云ひながらそこから立ち上がると、騒動を知つて駆けつけてきた朱藍坊が小僧の眼の前に立つてゐた。
「大丈夫か、小僧よ!?」
「ああ、大丈夫だ。ちよつと転んだだけだ」
「どうやらたこ焼き屋に倒れこんだやうだな、お前の顔にタコが澤山くつついてゐるではにやあか」
「さうなんだよ、こんな目に遭ふのはまうタコさんだ」
「そんな駄洒落を云つとる場合ではにやあだろ」
Simg_0173 「へへ、だが、タコの足には吸盤が附いてゐる所為か、かうやつて顔にタコがいつぱいくつついてゐるとなんだか妙に氣持ちがよい。清涼感もあるしな」
「さうか、それはちよつとした発見だな」
「今なんと云つた?」
「発見と云つたんだわ」
「いや、ハツケンではない、ここはロツケン(六軒)だ」

猛練習ふと思ひ出すラムネかな  神楽小僧
(炎天下の部活練習が終はつた時に飲んだラムネの味が今だに忘れられない小僧である)
(了)

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