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2006年7月10日 (月)

筒井町出來町天王祭 其の三

Simg_0187 西枇杷島を後にした小僧はまづ出來町に向かつた。JR線の上に架けられた出來町橋の近くで三輌の山車が出会ふ時刻が近づいてゐたからであつた。祭りの前日(まへび)は出來町の山車はそれぞれ違ふコースを曳き廻されるのだが、夕刻になると三輌は同じ場所に曳き入れられ、それぞれの山車の関係者の挨拶がそこで行はれるのである。小僧が件(くだん)の場所に着くと、そこにはまう三輌の山車が勢揃ひしてゐて、山車を曳く氏子たちや見物人を含めた大勢の人たちがそれらを取り囲んでゐた。

だが、大勢の人たちと云つても、それはそれほどの数ではない。全部で五百人を超えてはゐなかつたのではないかと思はれる。したがつて、この場合どちらかと云へば少ないといふ表現が当てはまるのかもしれない。しかし、そのやうに祭りの参加者や見物人が少ないのも仕方の無いことと云へるだらう。それ眼当ての観光客が訪れるやうな有名な山車祭りとは訳が違ふのである。名古屋の人間でさへ、その殆んどが知らないやうな祭りだからその見物人の数も限られてしまふのである。

と云ふと、なんだかこの祭りに対して侮蔑的な言葉を吐いてゐるやうに思はれるかもしれないが、そのやうなことは決してない。事実はその反対である。この祭りのよさや価値を認めてゐるからそのやうな皮肉つぽい云ひ方になつてしまふのである。

この筒井町と出來町の天王祭はどちらかと云へばマイナーな祭りである。だが、このまま続いてゆけば、いつの日にかそれは脚光を浴びることになるに違ひない。何故なら、それは江戸時代の名古屋の三大祭りの衣鉢を継ぐ数少ない祭りの一つで、それだけに貴重であり、、文化財としても貴重な山車や人形からくり、及び能楽に影響された芸術性の高いお囃子はその存在感を今後ますます高めていくと考へられるからである。事実、祇園祭や高山祭に較べて規模では負けるが内容では負けてゐないと云つてよく、そのやうな祭りだから、万人がそれを認めないわけがないのである。

だが、今はその時期ではないらしい。この祭りの価値を認める人は云ふまでもなく、その存在さへも知らない人のはうが今はまだ多いのである。全国的には全く無名の祭りであると云つてもよいだらう。実際、出來町の三輌の山車の出会ひの場に集まつた見物人の殆んどは町内の人たちで、何人かの山車祭りマニアや素人カメラマンが山車の周りをうろちよろしてゐるだけであつた(小僧もその一人だが)。

Simg_0699 しかし、そのやうな見物人の余り多くない小ぢんまりとした祭りが小僧はどちらかと云へば好きなのである。これはそのはうが酒や食べ物にありつける機会が多いといふ理由から云つてゐるわけではない(少しはあるが)。人込みが嫌いだといふ理由から云つてゐるわけでもない。以前にも少し述べたが、見物人が多い祭りはそれだけ規制が強化されることになつて、その祭りをゆつくりじつくり楽しむことができないからなのである。つまり、警官の顔が厳しくなればなるほど、規制用のロープの数が増えれば増えるほど、それだけ祭りの風情は失はれてしまふのである。それだけではない、祭りに参加してゐる人と見物人との間の距離が物理的にも精神的にもその分だけ遠くなつてしまふのである。

といふわけで、それが山車祭りなら、山車と見物人との距離が余り離されることのない、お囃子も間近で聴けるやうな祭りが小僧としては好ましいのだが、筒井町と出來町の天王祭は幸ひにもそのやうな祭りであると云へるだらう。そしてそれは、時には家族的な雰囲氣も感じられる、見物人にとつては大変居心地のよい祭りなのである。したがつて、将來この両町の天王祭が広く知られることになるだらうと云つたが、小僧はそれを願つてゐる反面、大勢の見物客がどつと押し寄せるほど有名になつてほしくはないと思つてゐるのである。

留守番を犬に任せて夕涼み  神楽小僧

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