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2006年7月22日 (土)

筒井町出來町天王祭 其の五

Simg_0539 それはさておき、広場では山車が整列した後、世が世ならば尾張徳川家当主といふ徳川美術館長と山車関係者の挨拶が行はれたのだが、最初に入場した筒井町の湯取車(ゆとりぐるま)の元老や宰領と云つた役員と徳川美術館長との挨拶が交はされてゐる時であつた、美術館の階段を上がりきつた入り口の前に立つてその様子を眺めてゐた小僧の耳に、突然「おーい!神楽小僧!」といふ小僧を呼ぶ大きな声が届いた。

一体誰だ、こんな所でオイラを呼ぶとは、と思ひながら小僧がその声のする方に眼をやると、湯取車を囲んでゐる群集の中から小僧に向かつて手を振つてゐる浴衣姿の男が居る。よく見ると、その男の顔は猿の顔のやうに赤いうへに、頭はユル・ブリンナーのやうな、髪の毛を全て剃り落としたスキンヘツドであつた。小僧の知り合ひにそのやうな男は一人しか居ない。それは西枇杷島で小僧に喰ひ物を散々ねだつたあの朱藍坊であつた。

すると、直ぐにその朱藍坊は群集を掻き分けながら小僧の方に近づいてきたのだが、どういふわけか、その顔はやたらとニコニコしてゐて、酷く機嫌がよいやうに思へた。だが、その理由は直ぐに判明した。朱藍坊の背後に一人の若い女性が附き従つてゐるのが見えたからであつた。それはボーイツシユな短い髪を栗色に染めた、細面のやや背の高い女性で、ジイーンズにピンクのタンクトツプといふ恰好であつたが、遠眼にはなかなかの美人のやうに思へた。

Simg_0292 やがてその若い女性を連れて小僧のところにやつてきた朱藍坊であつたが、着てゐる浴衣は例のビヂネスホテルの名前が入つたもので、やはり前日と同じやうに酒の匂ひをぷんぷんさせてゐた。
「小僧よ、昨日は世話になつたな、ヒヒ、だが、途中で消えるとは水臭いぞ」
「お前が余りにも氣持ちよささうに寝てゐるからそのままにしておいたんだ。そんなことより、一体どういふことだ、朱藍坊、お前が若い美人の女性と一緒とは?そのうち、雨どころか、雪でも降るのではないか?」
「ヒヒ、相変はらず口の悪い奴だな。オレはな、かう見えても女性にはもてるんだわ。ぎやうさんガールフレンドがをる。で、この女性はそのうちの一人といふわけだわ。な、さゆりちやん?」

と朱藍坊がにやけた顔を側に居る女性の方に向けると、そのさゆりちやんと呼ばれた女性は小僧の方になんとなく人懐つこい笑顔を向けて云つた。
「こんにちは。うち、名前を三条さゆりつて云ふの、よろしくね。ところで、あなた、出來町にあるライブシアター×映つてご存知? 実はうち、そこに出演してゐるダンサーなの、フフ。今度是非うちの踊りを見にいらしてね!」
ライブシアター×映といふのは徳川園から余り遠くない所にあるストリツプ劇場で、小僧はそこに入つたことはなかつたが名前だけは知つてゐた。

殿様の庭に夢見む花菖蒲  神楽小僧

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