閑話 日めくり詰め将棋カレンダー2008
祭りとは関係の無い話で恐縮であるが、最近氣になつてゐることが一つあるので、そのことについて書いてみようと思ふ。それは何かといふと、将棋を指す女流棋士に関することである。
世の中には将棋を指すことを生業としてゐる人たちがゐる、つまりプロの将棋棋士のことであるが、男性棋士たちは全て『日本将棋連盟』といふ團体に所属して活動してゐる。そして、女性のプロ棋士たちもかつては全員がその連盟の配下にあり、『女流棋士會』といふ組織を作つて活動してゐた。
ここで「してゐた」と過去形にしたのには理由がある。いろいろな事情があつて、その日本将棋連盟から離れ、女性たちだけで独立して活動しようといふ女性棋士たちが現れたからである。将棋を指す女性のプロ棋士は現在五十数人ゐるのであるが、その中の十七人が女性棋士だけの組織を新たに作つて連盟から飛び出したのである。男性に頼らず、女性たちだけで、それも十七人といふ少ない人数で、自分たちの理想に向かつて道を切り開いて行かうといふわけである。
だが、この行動には大変な危険が伴つてゐる。連盟に残つてゐれば、いろいろな棋戦に参加することが保障されてゐるが、出ればそれが保障されないからである。それに、今まで連盟から与へられてゐた普及活動などの仕事が無くなるから、収入が大きく減ることが予想される。つまり、連盟を出たことによつて、彼女たちの生活は大変厳しいものになるのである。といふわけで、彼女たちの取つた今回の行動は大変勇氣のあるものと云へるであらう。
しかし、事情を知らない人は怪訝に思ふかもしれない。それほどまでにして独立する必要があるのか、と。今まで通り連盟に所属してゐて何が不都合なのか、と。もつともである。だが、そこには止むに止まれぬ事情があつたのである。失礼。「あつたのである」と断定すると、あたかも小僧が何もかも知つてゐるやうに取られてしまふ。ここは「あつたやうである」と云ふべきであつた。
小僧は将棋が好きで、プロ棋士たちの活動にもそれなりに関心があるから、彼女たちの行動も新聞やネツトなどで頻繁にチエツクしてゐた。そして、それによつて彼女たちがどうして独立しなければならないやうな状況に陥つたか、その理由をある程度知ることができた。といふことで、事情を知らない人のために、その経緯をここに書くこともできるのであるが、それはやめておかうと思ふ。ますます長い文章になつてしまふからである。だが、彼女たち十七人が独立するまでにはいろいろな困難があつたといふことだけは一言云つておかうと思ふ。
ともあれ、彼女たちは独立を果たした。そして、彼女たちの組織の名前も『日本女子プロ将棋協會(LPSA)』と決まつて、現在、十七人全員が精力的に活動してゐるやうである。つまり、今のところ彼女たちの船出は順調に行つてゐるやうに見える。大変喜ばしいことである。しかし、彼女たちには、この先何があるか判らない、といふ不安もきつとあるに違ひない。実際、これから先には女流棋士として活動していくうへでいろいろと難しい問題が待ち受けてゐるのである。だが、それらをなんとか克服して、更なる発展を遂げて行つてほしいものである。
さて、その日本女子プロ将棋協會は財源を確保するために、ホームページにオンラインシヨツプを設け、将棋に関するグツズをそこで販賣してゐるのであるが、その中に目玉商品として協會が強くプツシユしてゐるものに『日めくり詰め将棋カレンダー2008』といふものがある。これは毎日一つの詰め将棋を解くやうに配慮された、要するに366個の詰め将棋が日めくり形式になつてゐるカレンダーである。
ユニークなカレンダーであるが、特筆すべきは、そこに掲載されてゐる詰め将棋のほとんどが、一般から公募したものであるといふことである。渡辺明竜王や谷川浩司九段などの有名なプロ棋士たちの作つた詰め将棋に混じつて、アマチユアの人が作つた詰め将棋が澤山散りばめられてゐるのである。中には九歳の子供が作つたものもあるといふ話である。
それが実際に販賣されて、手に入るのは十月下旬になつてからといふことであるが、将棋が好きな方は予約注文されたらどうだらうか。予約すると、協會所属の女流棋士の直筆サイン入りのものが貰へるといふ話である。え? 何故そんな祭りに関係の無い女流棋士やカレンダーの話を長々とするのかつて? へへへ、実を云ふと、その日めくり詰め将棋カレンダーには小僧の作つた詰め将棋も掲載されてゐるからである。
露寒や王手の声のくもりたる 神楽小僧
https://joshi-shogi.com/ec/original/calendar/2008calendar.html
写真は日本プロ将棋協會の島井咲緒里初段 二月親睦會にて撮影
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